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メッセージ

私たちの元素−国際周期表年(IYPT)実行委員会

山内 薫

 2018 年5月15日、IUPAC現会長のQifeng Zhou 先生(元 北京大学学長、元 吉林大学学長)のご同席の下、日本学術会議第3部化学委員会IUPAC分科会が開催された。その場でZhou会長が、日本において国際周期表年(International Year of the Periodic Table of Chemical Elements)2019を締めくくる閉会式を開催してはどうかと提案された。酒井 健 委員長(九州大学大学院理学研究院・教授)は、このご提案を前向きに受け止めるべきと判断され、直ちに分科会での意見交換の後、分科会として、UNESCOが主催する閉会式を日本に誘致することを了承した。

 2019年は、ドミトリー・メンデレーエフが元素の周期律を発見してから150 周年に当たります。そこで、2017 年11 月、国連とUNESCO は2019 年を「国際周期表年2019: International Year of the Periodic Table of Chemical Elements 2019;IYPT2019」とすることを議決しました。2 年前に、4 つの新元素名が確定され118元素がそろった結果、周期表の第7 周期までが完成したことは記憶に新しいところです。その際113 番目の元素が日本の理化学研究所仁科加速器科学研究センターのチームによって発見されたことからニホニウムと命名されたことはご存知のことと思います。2019 年はこの118 個の元素が並ぶ周期表の完成を記念するという意味においても、タイムリーな記念の年となりました。
 この記念すべき年には、UNESCO のIYPT 開会式の式典がパリで1 月29 日に開催され、メンデレーエフの誕生日である2 月8 日に、記念の式典がモスクワにて開催されるなど、すでにIYPT を記念する様々な企画が計画されています。このUNESCOのIYPT閉会式を日本がホストすることになったことは、日本の学術のコミュニティーにとって大変喜ばしいことです。
 日本学術会議第3 部では、IUPAC分科会での議論を受けて、化学分科会と物理学分科会が合同で、国際周期表年(IYPT)記念事業検討分科会(委員長:酒井 健)が設立されました。そして、日本におけるIYPT を充実したものとしていくために、分野の垣根を越えた議論が重ねられました。その結果、2 月23 日に日本学術会議講堂にて、公開シンポジウム「周期表が拓く科学と技術 国際周期表年を迎えて」が開かれることになりました。
 一方、閉会式を含め、2019 年に開催される周期表に関わる様々なイベントを機動的に運営するためには、企業からの寄付などの資金提供を受けることのできる組織を作ることが必要となります。日本化学会では、IYPT 記念事業検討分科会とIUPAC 分科会の委員長である酒井先生からの打診を受けて、川合眞紀会長のリーダーシップの下、日本化学会戦略企画委員会の小委員会として「国際周期表年(IYPT)実行委員会」を設置することになりました。委員長には、周期表の普及に尽力して来られた玉尾皓平先生(豊田理化学研究所所長)が就任され、日本学術会議と連携する形で、日本におけるIYPT を記念するための事業を展開することとなりました。
 実行委員会メンバーには(以下、敬称略)、石切山一彦(IYPT 実行委員会副委員長・IUPAC賛助会委員会委員長・東レリサーチセンター常務理事)、川合眞紀(日本化学会会長・分子科学研究所所長)、福田 伸(日本化学会副会長・三井化学常務執行役員、研究開発本部長)、巽 和行(IUPAC元会長・名古屋大学特任教授)、荒川泰彦(東京大学特任教授)、延與秀人(理化学研究所仁科加速器科学研究センター長)、若林文高(国立科学博物館理工学研究部)、澤本光男(日本化学会常務理事・中央大学教授)、鈴木慎一(日本化学会事務局長)の方々が、そして、私が幹事として参加することとなりました。
 この物理学、化学、工学の分野にまたがり、産学連携体制で発足した実行委員会では、IYPT2019の機会に、次世代の科学を担う学生に周期表がいかに魅力的で美しいかを味わうことができる場を提供すること、周期表を通じて産学官の交流がより一層促進し、産学官を挙げてIYPT をお祝いすることを目指して、「私たちの元素」プロジェクトを推進することといたしました。

 「私たちの元素−エッセイコンテスト」は、学生(中学生、高校生、大学生が対象)が118 個の元素の中から1 つを選び、その元素についてエッセイ(作文)を書いて応募するという企画です。応募されたエッセイを厳正に審査の後、それぞれの元素について最も優秀なエッセイを中学の部、高校の部、大学の部で表彰します。そして、コンテスト終了後は、コンテストのウェブページに掲載した周期表のその元素をクリックすると、コンテストで選ばれたエッセイが掲載されたページが示されるようにします。第1 回目のコンテストの応募の開始は2019 年1 月初め、締め切りは3 月末、また、第2 回目のコンテストの締め切りは9 月10 日となる予定です。このコンテストを通じて、学生の皆さんが、元素の周期表を通じて自然に親しむとともに、人類社会おける元素の役割に対する理解を深める機会となることを願っています。

 「私たちの元素−産学からのメッセージ」では、大学の学科、専攻、大学や公的研究機関の研究グループなど教育・学術研究に関わる組織やグループなどのユニットに、最もゆかりや関心のある元素(1 つに限らない)を118 個の元素から選んでいただいて、学科・専攻・プロジェクトなどの特徴や成果を広告という形で、ウェブページの「産学からのメッセージ周期表」に掲載していただきます。また、日本の産業を支える企業や企業の研究開発のグループ等にも、最もゆかりや関心のある元素(1 つに限らない)を選んでいただき、各企業や企業の研究ユニット等がその事業や研究開発の特徴や成果を広告という形でウェブページの「産学からのメッセージ周期表」に掲載していただきます。このウェブページの「産学からのメッセージ周期表」は、アカデミアや産業界がどの元素を中心に教育・研究・開発をしているかを互いに示すことができる賑やかな周期表となると期待しています。なお、広告費の収入は「私たちの元素−エッセイコンテスト」の運営などの教育活動、および、年末に予定されている閉会式の準備・運営に役立てることとしています。

 我々の世界は様々な元素によって構成されています。2019 年は、その元素のもつ周期性の美しさを皆で味わうためのとても良い機会です。日本化学会IYPT 実行委員会では、「私たちの元素」プロジェクトや2019 年3 月17 日に開催される日本物理学会・日本化学会合同シンポジウム「国際周期表年2019」、 そして、IYPT2019 閉会式を通じて、2019 年が学生の皆さんと産学の研究者にとって意義のある楽しい記念の年となるように努力をして参ります。そして、日本学術会議IYPT 記念事業検討分科会・IUPAC 分科会と連携し、このIYPT2019 が、次世代の若手人材の育成と未来志向の産学官連携に資するように努力をして参ります。また、2020 年以降も周期表を通じて、教育研究と産学官連携に資することを目指します。
 是非、ウェブサイトhttps://iypt.jp をブックマークしていただいて、このウェブサイトを通じてIYPT2019 に関連するイベントの情報を共有していただきたくお願いいたします。私共は皆様と一緒に、エッセイコンテストの「私たちの周期表」と産学からのメッセージの「私たちの周期表」を作り上げていきたいと願っています。

(平成30年11月7日)

このメッセージの内容は「化学と工業」誌、第72巻、2019年1月号、036 - 037ページに「日本化学会発:私たちの元素−国際周期表年(IYPT)実行委員会」として掲載されている。