研究室トップ → メッセージ

メッセージ

発展するAcademic English for Chemistry
− 英語教科書の出版とGlobal Science Course の発足

山内 薫

化学専攻において、平成14年度から11年間にわたって続いた「博士課程1年生のための実践的な英語コースAcademic English for Chemistry (AEC)」が平成24年度を最後にその役目を終え、実践的な英語演習の重点を、より若い世代の学生に移すことになったことは、すでに昨年のメッセージに紹介した通りです。そして、平成20年度から修士課程1年生を対象として開講されてきた Basic Academic English for Chemistry (BAEC) については、平成25年度から、その名称をAcademic English for Chemistry (AEC)に変更して引き続き開講することになりました。

化学教室では、学部教育においても実践的な英語演習の機会を提供することが必要であると考え、平成25年度からは、夏学期に、Basic Academic English for Chemistry I (BAEC I) を学部3年生のために、そして、Basic Academic English for Chemistry II (BAEC II) を学部4年生のために開講しました。さらに、冬学期には、理学部化学科進学が内定している学部2年生のためにElementary Academic English for Chemistry (EAEC)を開講しました。このEAECは、平成24年の冬学期にパイロットプログラムとして始められたものです。

これらの4つのコース、AEC、BAEC II、BAEC I、EAEC、では、それぞれの学年の学生の皆さんのほぼ全員が授業に出席しています。化学専攻・化学科の学生の皆さんが、このプログラムを自分達のために役立つものであると積極的に評価してくれていることは大変ありがたいことです。毎年、夏に開催されるSummer Intensive Course of Academic English for Chemistry (ICE) や、年度末に開催される AEC シンポジウムには、化学専攻の大学院学生と化学科の学部学生が積極的に参加し、その内容は、大変充実したものとなっています。

我々が、長年にわたって、この英語プログラムを続けることができたことは、我々化学専攻・化学科の学生達を親身に指導してくださった英語の先生方のご努力とご支援のおかげです。本年度(平成25年度)も、昨年度に引き続き、Timothy Wright 先生(大妻女子大学)がリーダーとなって下さいました。そして、Wright 先生、David Taylor 先生(東京大学)、Evelyn Reinbold 先生(文教大学)が授業を担当して下さいました。ここに、3名の先生方のご指導とご協力に感謝いたします。我々は、この英語プログラムの重要性を考え、平成26年度以降も化学専攻の資金が続く限りAEC, BAEC II, BAEC I, EAECを継続していきたいと考えています。化学専攻と化学科の大学院生が、この英語演習の機会を活用し、将来、国際的に活躍する研究者となって欲しいと願っています。

また、化学専攻・化学科の英語演習の取り組みが基礎となって、大学院理学系研究科・理学部においても、平成25年度から、学部3年生の冬学期に英語演習コース Academic English for Science (AES) が開講されました。このAESでは、70名を超える理学部の各学科の学生が、5クラスに分かれて、熱心に英語演習の授業に出席しています。このAESを理学部に導入するに当たっては、理学系教務委員会委員長の久保健雄先生(生物科学専攻・教授)がご尽力下さいました。そして、Timothy Wright 先生のリーダーシップの下、David Taylor 先生、Lorraine Reinbold 先生(白鷗大学)、James Francis 先生(大妻大学)の3名の先生方が授業を担当して下さいました。さらに、理学系では事務職員の英語レベルの向上を目指した「職員のための英語コース」が平成25年2月から始まりました。このコースではTim Wright 先生が週に1回の授業をご担当下さいまして、事務職員の方々が熱心に受講しています。我々が化学専攻・化学科で進めてきた英語演習プログラムが、このように、理学部の他学科の学部学生の実践的な英語教育の場へと広がったことを、そして、事務職員の英語スキルの向上に役立てられたことを私は大変嬉しく思っています。

平成25年には、一つ、特筆すべきことがありました。それは、英語教科書「Academic Communication: How to Use Your English in Science(科学者のための英語コミュニケーション)」が東京大学大学院理学系研究科・理学部化学教室雑誌会から出版されたことです。この教科書は、10年以上に渡る化学英語演習の授業を通じて培われてきたノウハウを一冊の本に凝縮したもので、化学分野に限らず、理系研究者、理系大学院生・学部生のためにまとめられた実践的教科書です。この教科書には、どうしたら英語で上手に論文を書けるのか、そして、どうしたら英語で上手に議論をすることができるのか、という問いへの答えが、7つの具体的なテーマを通じて説明されています。出版以来、好評を博し、AEC, BAEC II, BAEC I, EAEC, AES の授業で役立てていただいています。

さて、最後になりますが、平成25年12月の末に、理学系に大変嬉しい知らせが届いたことを報告したいと思います。それは、理学系研究科・理学部が平成26年度特別経費として概算要求をしていた「グローバル基礎教育プログラム−学部後期課程の国際化モデル拠点」が平成26年度より5年間のプロジェクトとして認められたという知らせです。そして、この事業の下、まず、化学科を中心として Global Science Course が立ち上がることになりました。英語で開講される講義を増やすとともに、学部後期課程に海外からの留学生を編入させるなど、国際的な環境の下で学部教育が進められていく予定です。化学科の学生の皆さんが、この Global Science Courseを活用して、化学英語演習で鍛えられた英語の力を、化学科での勉学の場で実践的に向上させていってくれるものと期待しています。

(平成26年1月19日)